コンテンツクリエイター専攻 

「プロ作曲家育成講座〜山口ゼミ〜」27期レポート

2019年秋期から、以前、8回で行なっていた講座を3日間にまとめて行う形になりました。地方在住やお勤めの方、忙しい方が日程調整をしやすいようにという配慮です。中身の濃さと修了後にextendedコースや劇伴コースが受講できる点は変わりません。

◆11月9日(土)(※10月12日から台風で日程変更)
13:00〜14:00「オリエンテーション〜自己紹介」
 初日はプロ作曲家養成講座「山口ゼミ」のオリエンテーションから開始。塾長山口哲一の自己紹介に続いて、受講生が一人ずつ音楽的なバックボーンや受講の動機などを交えて自己紹介をしていきます。山口ゼミの教えである「空気を読むな。自分が気になることはどんどん質問しろ」が山口から伝えられ、積極的に手が挙がり始めます。400人を超える山口ゼミ受講生のFacebookグループへの誘導や、ITベンチャー企業、クレオフーガと共同開発している作曲家のためのコミュニケーションツールCo-Writing Studioなど山口ゼミの特徴であるデジタルツールの活用法などが伝えられます。

14:15〜15:45「コンペに勝つデモテープの作り方〜持ち込みデモテープ添削」
 副塾長の伊藤涼が登場し、山口ゼミの中核である「コンペの勝ち方」について語り始めます。そもそも職業作曲家を対象にした楽曲コンペというのはどういう理由で始まったのか?レコード会社のA&Rはどのようにデモを聴いていくのか?元ジャニーズのA&Rとしての経験も踏まえて、的確な説明、指導がされていきます。受講生の持ち込みデモについてコメントし、今後の指導方針が検討されていきます。伊藤涼がA&Rとのコミュニケーションからこんな曲が求められるだろうという推測に基づいて、「本物よりも本物らしい」疑似コンペシートが4パターン作成され、そこから自分で選んでデモを作ります。

16:00〜17:30「ヒットプロデューサー列伝1〜ゲスト講師:浅田祐介」
 今回のゲスト講師であり、山口ゼミフェローとしてお馴染みの浅田祐介さんは、Charaのデビューから作曲家キャリアを持つベテランであり、今も第一線で活躍する長いキャリアを誇るサウンドプロデューサーです。アーティストとしての活動経験もあり、総合的な視点から作曲家について語れる方です。同時に、長い親交がある山口との最近面白かった音楽やアーティストなどの旬の話題も刺激的です。
 終了後には、山口ゼミ恒例の講師を交えた懇親会が行われ、より率直な意見交換の場となります。毎回現役の第一戦で活躍するゲストが参加するのも山口ゼミの特徴です。

◆11月23日(土)
13:00〜14:00「プロ作曲家が知っておくべき著作権と業界慣習」

 作曲家にとっては生命線とも言える著作権ビジネス。自分の楽曲がリリースされて世に出ていくとどうなるのかを、実践的に知る方法は少ないものです。音楽ビジネスの専門家である山口が具体的に説明し、質問を受ける貴重な場です。それ以上に有益なのは、明文化されていない日本の音楽業界の慣習がわかりやすく理解できることです。この日も印税比率や分配までの期間など詳しく話されました。

14:15〜15:45「疑似コンペ公開添削1」
 「Chuning Candy」「Uru」「Snow man」「乃木坂46」という4つの「疑似コンペシート」から1アーティストを選んで、コンペに提出するつもりでデモを作成し、その場で聴き、アドバイスを求めるという、山口ゼミの中核的講義です。一般に情報は公開されず、作家事務所などを経由して提出しても、たいていはノーリアクションな「コンペ」の向こうではどのようなジャッジがされているのかを窺い知り、採用に近づく方法がわかる講座です。数々の受講生を泣かせてきた「伊藤斬り」と呼ばれる辛口アドバイスを経て、プロになった作曲家が数多く存在している伝説の講座でもあります。

16:00〜17:30「ヒットプロデューサー列伝2〜ゲスト講師:丸谷マナブ」
 旬の作曲家の本音が聞けるのも山口ゼミの魅力の一つです。今期は、「ラブラドール・レトリバー」をはじめAKB48の一時代を築いたヒット曲の数々を生み出し、Little Glee Monster「世界はあなたに笑いかけている」で2018年 日本レコード大賞 作曲賞を受賞した丸谷マナブさんをお呼びしました。アマチュア時代の音楽的背景から、売れなかったアーティスト時代を経て、作曲家として大成功を収めるまでの変遷を伺いました。成功につながるマインドセットを山口が聞き出していくのがいつものやり方です。その後の懇親会でも、より実践的なお話を伺うことができました。

◆12月14日(土)
13:00〜14:00「プロ作曲家の心得」

 アーティスト・マネージメントを出自とする山口は、クリエイターの日常生活の在り方、マインドセットについて深い造詣を持っています、プロ作曲家になり、成功して、続けていくための心構えを説く時間です、「日常編」「技術篇」「人生篇」「処世術篇」「次世代篇」「セルフブランディング篇」と6つのパートから成る教えは、単なる精神論を超えた本質的なメソッドとなっています。

14:15〜15:45「ファーストデモコンテスト」
 昨今のコンペはデモテープとしての質が高く、そのままリリースできるような仮歌、アレンジのものしか秤の上に乗ることができません。ですが、いちばん大切なのはメロディですから、そこに特化して、メロディとコードだけがわかるデモ(ファーストデモ)を元に、J-POPでヒットに繋がるメロディについて識り、考える講座です。秀作だと伊藤涼が認めたファーストデモは、そのままCWFメンバーとのコライトによるブラッシュアップを経て、A&Rに聴かせることになります。この日はLittle Glee Monster向けのファーストデモが選ばれ、同アーティストに提案できるようにCWFメンバーとコーライト中です。

16:00〜17:45「疑似コンペ公開添削2」
 前回の添削と、その後のオンラインの指導を踏まえて、一歩ステップアップしたデモを聴く時間です。数百曲が集まることも珍しくない著名アーティストのコンペで勝つために自分が何が足りないのか、各受講生は感じることができたようです。
 3日目ともなると打ち解けてきますので、懇親会でも伊藤涼に食い下がって、質問をする受講生も多く、熱量の高い場となりました。山口ゼミ受講経験が前提となる上級コース「山口ゼミextended」に進む人も多いようです。